鉄道小バザール本文へスキップ
鉄道小バザール






 
 2000年に北京からウルムチまで中国を鉄道で横断しました。総延長距離3765q。2020年時点では動車(新幹線)を乗り継ぐと30時間程度で走破できるところを、1週間かけて旅しました。    
 20年前の情報なので、旅行・鉄道情報は役に立ちませんが、当時の雰囲気を感じ取ってもらえれば幸いです。また、デジカメではないので、セピアっぽい画像が多いことはお許しください。Part1(大阪⇒北京)は、また、時間があれば再現するよう努めます(Part3<ウルムチ⇒アクタウ>はこちらへ)。


初掲載:2020年6月 Last Update:2020年6月

北京西
 4/27 2330
西安
 4/28 14:47 
T7次特快
1,200q 
軟臥 417
西安
 4/30 0930
トルファン
 5/2
 0840
K367次直快2,425q 軟臥 427
トルファン
 5/3
 10:54
ウルムチ
 13:10
T53次特快
143
q
 
開座   24元
1元=13.14JPY (2000年5月時点のレート) 







3年でガラッとイメチェンした北京にびっくり

 CA926便で成田から北京に到着。まずは繁華街の西単に向かいましたが、3年前に初めて北京に来た時よりも急速にきれいになった印象です。スターバックスがあったのにはびっくりしました。前年(1999年)が中華人民共和国建国50周年で、街を大改造した結果なのか、ダサい大都市というイメージを払拭していました。ただ、スターバックスとマクドナルドと吉野屋が並んで店を構えていたのには笑ってしまいました。
 これからの旅程を考え、吉野家で牛丼・中(日本の並盛:10.9元=143円)を食べました。思ったより暑く、着替え用に街中でTシャツ(28元=368円)を買い、北京西駅へと向かいました。


    左下にスターバックスと吉野家(オレンジ)とマクドが                   巨大な体育館のようなコンコース

 北京西駅は当時、中国で一番大きな駅と言われていました。宮殿のような外観。日本人にはいい意味でも、悪い意味でも真似できないデザインです。まずは中国スタイルを意識して、プラスチック製水筒とカップラーメンを買い、軟臥待合室へ。椅子は大きく、フカフカで天井も高く、VIP気分。暗いのが玉に瑕か。

 発車40分ほど前に放送があり、プラットホームに向かいました。中国の車両はバリエーションに乏しく、発見といったものはありませんが、夜行の出発ということで少しテンションが上がります。
 
 23時30分、ゆっくりとスタート。中国の寝台につきものの、“換票”という、紙チケットとプラスチック札との交換の儀式を程なく終える。前日はほぼ徹夜だったこともあり、ほどなく眠りにつきました。



           中国版クレープはマズイ 



  対向列車は中国国産電気機関車のルーツと言われる韶山1型が牽引          エアコンがついているので「新空調」とわざわざ記載

 7時、鄭州で目が覚める。駅をブラブラして寝台に戻り、横になると、またうとうと。再び目を覚ますと10時を過ぎて、いつの間にか洛陽を過ぎていました。中原と言われる、中国ど真ん中エリアを疾走します。

 車両探検をしていると、食堂車で昼食の準備か、キャベツをテーブルの上で切っているところに遭遇。いくら厨房が狭いからといって、テーブルで切らなくても、という思いはしたが、中国らしいといえばそのとおり。


    ホームに降りて大きく背伸び          朝なので寝台はぐちゃぐちゃ 

乾燥した地域を通り過ぎます。三門峡西駅で中国版クレープのようなものを買う。直径60pはあろうかという薄い生地をたたんで、ビニール袋に入れて渡された。3元だった。味はなく、油が悪く、あまりうまくない。衝動買いを少し後悔。目玉焼き部分を中心に3/4ほど食べて、後は残しました。

 そこで、前夜買っていたカップラーメンを食べることにしました。中国はサモワール(湯沸かし機)が常備されていて助かる。中国のカップラーメンは必ず折りたたみ式のフォークが入っていて便利です。ただ、麺が短く、ズルズルっというよりもボソボソといった感じでした。



 14時47分、西安駅着。駅前広場は喧噪と雑踏の洪水。「中国はこうでなくっちゃ」と独り言をつぶやいている自分がいました。

       




筆談で予約した列車に乗り込む


   列車はチベット方面のコルラ行き            5角=6.5円でバスに乗れる              西安の駅前広場

 28日、西安到着時に現地の旅行代理店でトルファン行きの切符の手配を依頼したところ、翌日、なんとか入手できました。ただ、なぜか思ったよりも安い。「軟座普快臥」と書いてある。つまり、「2段の寝台だが、急行で、エアコンはないよ」ということらしい。エアコン付きならば「新空調」と書いてあり、価格も高くなる。特快(特急)でもない。直前の予約なので、贅沢は言ってられません。

 宿をチェックアウトして小綺麗な小吃屋に入り、油条(2元)とピータン粥(4元)を注文。油条はアツアツで柔らかく、今まで食べた油条の中ではベスト。ちぎって粥につけてぱくっ。バス(5角=7円!)に乗り、西安駅へ。



     広告だらけの西安駅                  典型的な緑皮車                韶山1型で牽引される


 少しばかり食料を買い込み、プラットホームへ向かう。韶山1型と言われる電気機関車に牽引された緑皮車(緑の塗装をした中国の典型的な客車)がやってきました。9時30分、出発。


瓜の匂いがする列車


                                宝鶏に到着                 手にしているのが謎の串刺し包子

 客車に乗り込むと、やはり古い。どこからともなく、瓜の匂いがします。思った通り、エアコンはない。しかも扇風機が動かない。換気は窓を開けて、ということだろうか。

 宝鶏に13時6分、定刻に到着。昼食の時間なので、大きな割り箸に刺さった4つの包子(肉まん)が売っていたので、2.5元で買う。あまりおいしくはなかったが、もったいないのですべて食べました。するとその割り箸が茶色い。これは豚肉のせいではなく、何度も使い古しているという証ではないか?少しゾーっとする。


  
                急峻な山間を走る                          食堂車の飯はほかほかでうまい 
    

 急峻な山並みと茶色い川の織りなす車窓の風景を撮ろうとするが、窓が汚れていて、まともな写真が撮れるかどうか不安です。寝台が上舗(上段)なので窓を開ける主導権を握れないもどかしさもあります。
 天水を過ぎた19時過ぎに食堂車に向かいました。ニンニクの芽と豚肉の炒め物(14元)と飯(2元)を平らげる。うまい。

窓を開けて写真を撮ろう


   オアシスの村では青々とした風景が             武威南駅             新疆方面から石油を運ぶ貨車がやってきた

 蘭州で一度目が覚めた。時計を見ると午前2時。少し寒くなってきました。寝台上舗の一人が降車。武威南(86分)でも老夫婦が降車し、コンパートメントを独占することができた。さあ、窓を開けて気兼ねなく写真を撮ることができるぞ。 
 朝食はマントウ(饅頭)とザーサイと粥で5元。子供の頭ぐらいあるような大きなマントウでした。昼ともなるとさすがに暑くなり、Tシャツ1枚になった。列車は前日と比してスピードを上げる。勾配のきついところを脱出したからだろう。この調子で進め。

      

 

 東風4型機関車とすれ違い       張・清水・酒泉とオアシスの街で停車                嘉峪関が遠くに見える

 張掖(13時7分)で、女性がコンパートメントに乗り込んできました。むさ苦しいおっさんよりはましか。色々と筆談で会話する。高倉健が話題に出たときは驚いた。そんな彼女も嘉峪関で降車(17時)しました。駅のホームでは名産のハミ瓜がリヤカーいっぱいに積まれていました。嘉峪関は万里の長城のいわば西の端と言われているところです。遠くにその名残が車窓からうかがえます。


      長城が車窓に迫りくる               食堂車の定食             当時、敦煌の最寄り駅であった柳園駅

 夕食は食堂車でいわば「プレート夕定食」を注文しました。食堂車に来た人はほとんどこれを食べていました。「細切り野菜炒め」「ポークリブ」「卵スープ」で20元。満足。
 
 22
18分に世界遺産である敦煌の最寄り駅(当時)の柳園に到着。数日後に改めて敦煌に向かうので、ここではスルー。ただ、観光地ということもあり、中国人の団体が乗り込んできました。わがコンパートメントにもやってきた。さあ翌日はトルファン。早めに眠ろう。(柳園は、私が旅行した直後に、一度は「敦煌駅」と名称を変更しましたが、2006年1月に、敦煌遺跡の、もっと近くを通る路線ができ、もとの柳園駅に名称を戻しました)


  荒涼とした大地をひた走る                                    トルファン駅に到着

 やはりというか、早起きしてしまった。相変わらず窓を開け、写真をパシャパシャ。ほぼ定刻の8時40分、47時間乗車してようやくトルファンに到着。白タクをシェアして、トルファン市街に向かい、高昌故城・交河故城を観光することにしよう。



当時の最長距離列車に乗車


トルファンの宿はドミトリーで32元(420円)     トルファンのバスターミナル    駅行きのバスチケット5.6元。これに5角の保険が徴収される 

 トルファン観光を終え、リキシャ・バスと乗り継いでトルファン駅に戻ってきました。ウルムチまでの切符を入手。上海発ウルムチ行きのこの列車は、別名「シルクロード特急」と呼ばれていて、当時、中国で一番長距離の列車と言われていました。



 切符に「開座」と書かれているのは、座席保証はないという意味ですが、空いている席を1つ確保。上海からはるばるやってきただけあって、テーブルも床下もひまわりの種のカスまみれでしたが、席がないことを思えば、たいしたことはない。10時54分、定刻に出発しました。


ウルムチに向け、ラストスパート 牽引するのは東風4C型ディーゼル機関車

それにしても、それにしても…

       
 
 トルファンは盆地で、中国で最も標高の低いところと言われています。そもそも「トルファン」とはウイグル語で「低地」を意味するとのこと。街の標高は0m以下で、近郊のアイディン湖は標高マイナス154m。そんなところから、標高1000mのウルムチを目指すので、山岳路線のようなものです。


 
  風が強いことを利用して風車が            礫砂漠とボゴタ峰                 けだるい車中

 車窓から風力発電の風車が見えたり、ボゴタ峰が見えたり、変化に富んでいます。それに比べ、車内の雑然さは、なんとかならないものか、とぼやきたくなります。ひまわりの種を器用に食べては口から殻をペッと吐き出す。テーブルや床面に、殻が散らばっています。車窓の景色もビニール袋等が砂漠に無造作に捨てられています。
 
 13時10分、今回の鉄道旅の最終地点、モンゴル語で「美しい牧場」の意味を持つ、ウルムチに到着しました。


                  ウルムチ駅に到着                   当時はウルムチ駅と言われていたが今はウルムチ南駅

How To Get Tickets

2000年当時の切符入手あれこれ

 2000年当時はTrip.comをはじめとするネットでの切符購入という方法がありません。この時の旅行では切符入手は次の3つの方法でした。
1)北京→西安
 日本の旅行代理店を通じて予約。日本の代理店が現地の代理店を手配して入手したと思われます。北京で宿泊していないので、紙切符の現物を受け取るため、北京空港から北京市内への車移動も手配(つまり、運転手から切符を受け取る)せねばならず、割高になっています。

2)西安→トルファン
 西安駅前の現地旅行代理店を訪ね、入手。手数料はメモに記録がないので不明ですが、2泊したのでこのような方法をとったのでしょう。当然、筆談。

3)トルファン→ウルムチ
 現地で当日入手。3時間ぐらいだから大丈夫と踏んでいました。


今は外資系ホテルになっている人民大廈に宿泊(西安)  兵馬俑(西安)              孫悟空で有名な火焔山(トルファン)
 

 

T52/53次特快
 トルファンからウルムチまで区間乗車しましたが、この列車は上海とウルムチを結ぶ、中国を代表する長距離列車で、当時は最長(4,077q)を誇っていました(今は拉薩・広州間が最長で4,980q)。別名シルクロード特急。列車番号が変わるのは途中で上りと下りが変わるため。ウィキペディアによると1960年代は同区間に101時間3分を要していたとのこと。私が旅した2000年5月頃には65時間10分に短縮されています。
 今ではZ40/41次と列車番号が変わり、Trip.comで調べると39時間42分と更に短縮されています。4,000qを越えているにもかかわらず、2日かからない!さらに同区間、新幹線を利用すると、乗り継ぎ時間を含めても37時間34分、乗車時間だけだと24時間3分で到着します。中国鉄道、おそるべし。


      山間を疾走する                 遠くにボゴタ峰を臨む

「シルクロード鉄道見聞録」芦原伸著 講談社刊
 著者は私がかつてよく読んでいた「旅と鉄道」の編集者です。この本は「週刊朝日創刊88周年記念企画」として2009年にローマ・バチカンから奈良、つまりシルクロードを鉄道で横断した紀行文です。

「中国シルクロード鉄道〜4000キロの旅〜」池上正治著 スリーエーネットワーク刊
 私の旅程とほぼ同じルートを途中下車しながら旅した紀行作品ですが、沿線の歴史も詳しく書かれており、読みごたえがあります。付録の地図がきれいです。

「中国鉄道大全」阿部真之・岡田健太郎著 旅行人刊
 「中国鉄道10万q徹底ガイド」というサブタイトルにもあるように、一般書で中国鉄道についてこれほど読みやすく、詳しく説明されているものはありません。2011年刊行のため、最新の新幹線の情報は望むべくはありませんが、中国鉄道の資料集としておすすめです。


       高昌古城(トルファン)             交河古城(トルファン)         羊と天池とボゴタ峰(ウルムチ郊外)

      月牙泉と鳴沙山(敦煌)                 敦煌遺跡               敦煌の屋台でケバブを食べる

                                      アゼルバイジャン・ジョージアの鉄道旅  Trainsへ(Index)

ナビゲーション