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鉄道小バザール

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「鉄道小バザール」とは、サラリーマンによる海外鉄道旅行の記録集です。



 標高世界2位の高所を走る鉄道で、鉱物をメインに輸送している。332キロを十数時間かけて走破する。半日の間で標高差4,631メートルを走る抜けるため、チベット鉄道よりもはるかに「高さ」を実感できます。本当に「知る人ぞ知る」高山鉄道。

 8/27   リマ(デサンパラドス) 07:00   ワンカヨ 19:00(21:50)  Turistico1-46  235sol.
 距離:332km 標高差:4631m 1sol.= 30.16JPY(当時のクレジットカードレート)


リマ(デサンパラドス)⇒ワンカヨ 2011年8月27日

初掲載:2012年12月 Last Update:2013年6月

早朝、リマ・デサンパラドスに到着

リマ・デサンパラドス駅

リマ・デサンパラドス駅は旧市街にある。早朝、新市街のホテルをチェックアウトして、小雨混じりの中、タクシーで向かう。すでに数十人が列をなして、改札を待っていた。

705 定刻を5分遅れで出発。しかし・・・

小雨ぱらつく中、出発。しかし、5分経たぬうちに、なぜか停車。左手に山が見える。中腹までバラックのような小屋がひしめいていた。南米は貧富の差が大きいとは聞いていたが、少し実感。それにしても動く気配がない。

機関車を取り換え、再度出発


20分ほどして、デサンパラドス駅方向に戻る。そのまま通り過ぎ、操車場へ。どうも機関車の調子が悪く、取り換えるようだ。
車内食が配られ、朝食とあいなった。
結局2時間近くロスして再出発。

揺れるゆれるユレル


線路の状態はすこぶる悪い。しかも遅れを取り戻そうと、上り勾配の中をかなりのスピードで走る。今までで一番「暴れた」状態となった。
とても静かに本を読むといった気にはなれない。もどした乗客もいる。

ツーリスティコはかなり快適

 揺れるものの、座席は快適。車両はクラシコ(2等)とツーリスティコ(1等)の2種類あるが、ツーリスティコがお勧め。十数時間乗車することを考慮すると、クラシコではしんどい。実際、ツーリスティコのほうが車両が多かった。

 この列車は、終着駅のワンカーヨのマンタロ渓谷の観光のための列車であり、翌日(翌々日)のリマへの戻りが夜行のケースも多い。寝台車がないため、睡眠を視野に入れた設計になっており、リクライニング角度もかなりあるほか、フットレストもかなりしっかりした作りになっていた。

サン・バルトロメで方向転換

 11:05にサン・バルトロメに到着。ここで一旦機関車を切り離す。機関車はターンテーブルで方向転換して再度連結。これで展望車が最後部となった。

 この時は乗客は車外に出て、煙草を吸ったり、ターンテーブルの様子を見たり、思い思いの時間を過ごすことができる。
(下の写真はサボテンの畑)


スイッチバックとオメガカーブの連続


 短距離で高度を稼ぐため、スイッチバックを何度も繰り返す。保安員がトランシーバー片手にポイントを手際よく操作する様子が展望車からよくわかる。

 あるスイッチバックでは、トンネルに突っ込み、その後逆行するという離れ業をしているところもあった。そこでは、展望車は暗黒とひんやりした空気に包まれる。それだけ限られた空間で高度を稼いでいる証拠なのだろう。トンネル内で停車中、何気なしに写真を撮ると、フラッシュで乱反射したディーゼルの「煤」が、雪のように写ったのには驚いた。


 日本ではほとんど見かけられない馬蹄状のオメガカーブもここにはある。眼下を見下ろすと先ほど通った線路が見える。さながらスケール1/1の鉄道模型のようだ。

   




4,000メートルを過ぎてもオープンエアの展望車


 前述したように、この列車には展望車がついている。つまりオープンエア。チベット鉄道のように気圧・酸素調節をするヤワな列車ではない(チベット鉄道もどこまで調節しているか疑問ではあるが)。

 高度を上げると空気の薄さというよりも気温が下がっていくのを実感する。朝はサボテン畑の中を走っていたのに、森林限界を超えた荒涼とした景色の中を今は進んでいる。上っていく。


最高所ガレラトンネルを越え、標高4,718.8メートルのガレラ駅へ

 8の字型(らしい)トンネルとガレラトンネルを過ぎ、ガレラ駅に1530に到着。世界第2位の標高の駅である。
しかも、ここは下車できるのだ(世界最高地のチベット鉄道のタングラ駅は下車できない)。

 はやる気持ちを抑え、デッキを降りる。呼吸はきつくはないが、胃が押し上げられている気分になる。はるか前方には険しい山と湖の幻想的な光景が広がる。35分ほど滞在。

遅めの昼食

 1 6:05ガレラ駅出発。展望車に長くいたので昼食がとっくにサーブされていたことを知らず、リクエストして遅めの昼食をとった。
 車内には看護師がいて、酸素ボンベを持って、行ったり来たりしていた。また、乗務員が耳ツン防止用のキャンディーを配っていた。

 

夕暮れをゆっくりと下降



ワンカーヨまでは下りがずっと続く。ラ・オロヤでようやく集落らしい集落が出てきた。

3時間遅れでワンカヨに到着




車窓は暗くなり、景色が全く見えなくなってきた。うとうとしていたら、ようやくワンカーヨに到着。2150で、予定より3時間近く遅くの到着となった。


How To Get Tickets

 Ferrrocaril Central Andino S.A社のHP(http://www.ferrocarrilcentral.com.pe/index_.php)からインターネットで購入。英語とスペイン語。パスポート番号・クレジットカード番号を入力する。座席指定もその場でできる。
プリントアウト(下部右側)して持参。車内改札で別のチケットをもらえる(下部左側)。プリントアウトしたものはバウチャーのようなものかもしれない。



Tips


 年に10往復程度しか走らない。鉱物の輸送がメインで、私たちが乗るのは合間の観光列車の位置づけである。しかも、雨季は運転していない。だから日本の夏(現地の冬・乾季)に月2往復しているのが実態です。

 これに乗るにはまず、運転日の把握から始めなくてはいけない(HPで確認できます)。勝手な推測だが、上記の理由で、あまり書籍やテレビ番組では紹介されないのだろう。年に10往復なら、乗車の様子を撮影した翌日に、外から列車を撮影するといったことができず、コストがかかりすぎるから。


 アンデス中央鉄道は上述のとおり、青蔵鉄道が2006年に開通するまで、世界最高所を通る鉄道でした。
 しかし、高所感・ワクワク感は青蔵鉄道の比ではありません。標高差4,631メートル、最も急な勾配が44パーミル(1000m行く間に44m登る)。
その他、橋が68、トンネルが71(手掘りがほとんど)、スイッチバック(英語ではZigzags)が9、それにオメガカーブにループと、まさに「ありえない」高山鉄道です。









 終着地ワンカーヨの情報は地球の歩き方にはありません。ロンリープラネットを入手するしか方法はありません。当然英語の情報となる。日本語のホームページを探したが、断片的なものしかみつけられませんでした。

 ちなみにワンカーヨはマンタロ渓谷観光の起点となる街。駅の裏に、ごく最近ショッピングモールができて(ロンリープラネットにも載っていなかった)、夕食をフードコートでとり、セーター(バングラデシュ製)を購入した。






 時間の関係でワンカーヨから当日の夜行バスでリマにとんぼ返りしました。実はバスのほうが安いし、早い。同区間を6時間30分程度で走破します。

 バス会社はいくつかあるが、お勧めはCRUZ DEL SUR(南十字星)社。ホームページ(http://www.cruzdelsur.com.pe/inicio.php)でクレジットカード決済で予約できる(英語・西語のみ)。

 バス車両もいろいろあるが、Cruzero Suiteがお勧め。フルフラットではないものの、2列+1列で、航空機のビジネスクラスを上回るシート環境でした。

 日本円で2,059円。強盗・盗難を不安視したが、バス乗車の際の改札時、および出発直前に乗務員がビデオカメラで乗客の顔を撮影していた。安全にかなり配慮していると言える。逆に、ここまですることの意味を考えると、以前は危なかったに違いない。


脱線閑話休題

バスで2度、目が覚める。その理由は・・・

 強行軍であったこともあり、快適なバスでぐっすり眠ることができた。
 しかし、2度、途中で目が覚めた。理由が最初はわからなかったが、峠越えの際の、左右の耳の鼓膜の空気層の破裂が原因とわかる。日本では考えられない現象を体験し、変に感動を覚えた。



参考資料
  

◆アンデス中央鉄道の山岳観光列車 渓谷を走る鉄道(鉄道ファン2010年2月号・野田正興氏の記事)
 日本で現状を知ることのできる数少ない資料と思います。書店での立ち読みの際、気にはなっていたが、ペルー旅行を思い立ったとき、あわててバックナンバーを入手。この記事がなければ行けなかった。

アンデスの高山列車(宮脇俊三著・文春文庫「汽車旅は地球の果てへ」収録)

 以前読んだが、アンデス中央鉄道のことは全く記憶に残っていなかった。ペルー旅行を検討するにあたり、自宅本棚をあさったところ、思いがけず再会した。
 四半世紀前の内容だが、詳細な地図も記載されており、乗車中、スイッチバックや駅の予測に大変役に立った。絶版だろうが、アマゾンのマーケットプレイスで探してみる価値はあります。宮脇俊三鉄道紀行全集にも収録されています。

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